数学の公式の覚え方は、全部を丸暗記するより「土台として覚える公式」と「そこから導ける公式」に分けると量が減ります。覚える公式は、導き方を追う→白紙に書き出して数字で確かめる→問題で使う、の3つの手順で忘れにくくなります。
この記事でわかること
- 公式がすぐ抜けてしまうよくある原因
- 覚える公式と導ける公式の3種類の仕分け方
- 導き方を追う・書き出す・使う覚え方の3つの手順
- 展開・解の公式・2倍角・数列の和などの導き方の実例
- うろ覚えの公式を数字を入れて確かめる方法
- 語呂合わせの使いどころと、似た公式の見分け方
数学の公式は、形だけを覚えると数日で崩れやすく、テストでも使いどころがわからなくなりがちです。反対に、どこから出てくるかを一度追った公式は、多少忘れても自分で組み立て直せます。
この記事の要点
- 公式は土台・導ける・決まりごとの3種類に分けて、覚える量を減らす
- 土台の公式も、導き方を1回は自分の手で追う
- 覚えたかどうかは、白紙に書き出せるかで確かめる
- 形があやしいときはθ=0やn=1などの数字を入れて確かめる
- 語呂合わせは順番と符号の補助にとどめる
数学の公式が覚えられない・すぐ忘れる理由
数学の公式が抜けやすいのは、式の形だけを、使う場面と切り離して覚えていることが大きな原因です。記憶力の差より、覚え方の差で起きています。
覚えるのに苦労している人は少なくありません。スタディサプリ進路が高校生エディター69人に行ったアンケート(2023年8月31日〜9月2日・編集部調べ)では、55人が数学IAを覚えるのは「大変」と答えています。
個別指導塾で生徒の様子を見ていても、公式が抜ける生徒には共通した癖があります。主なものは次の4つです。
- 形だけを覚えている:意味やどこから出てくるかを知らないので、1か所忘れると戻せない
- 使う場面と結びついていない:公式は言えるのに、問題を見てどれを使うか選べない
- 似た公式が混ざる:順列と組合せ、等差数列と等比数列の和などを取り違える
- 思い出す練習をしていない:公式集を眺めるだけで、何も見ずに書く練習が少ない
最後の「眺めるだけ」は、とくに起こりやすい癖です。読んでいる間は「わかる」と感じても、何も見ずに書けるかは別の話になります。
公式は3種類に仕分けると覚える量が減る
数学の公式は、全部を同じように覚える必要はありません。次の3種類に分けると、本当に覚えるものはかなり少なくなります。
数学の公式の3つの仕分け
- 覚え方は、公式の種類で変える
- 土台の公式覚える。そのうえで導き方も1回は追う。例:三平方の定理、解の公式、加法定理、sin²θ+cos²θ=1
- 土台から導ける公式丸暗記より導き方を練習する。例:2倍角・半角、和と積の公式、等差・等比数列の和
- 決まりごととして覚える公式今の学年では導くのが難しいので、使い方とセットで覚える。例:錐の体積の3分の1、球の体積・表面積
図:土台の公式を少数しっかり持ち、そこから導ける公式は導き方で覚えると、覚える量が減る
高校の学習指導要領も、数学Ⅰの「図形と計量」で、三角比を使って『定理や公式として導くこと』を身に付けるべき力に挙げています。数学Ⅱの三角関数でも『加法定理から新たな性質を導くこと』とあり、公式は導いて身に付けるものという扱いです。
公式の種類と覚え方の違い
| 種類 | 代表例 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 土台の公式 | 三平方の定理・解の公式・加法定理・正弦定理・余弦定理 | 形を覚え、導き方を1回追う |
| 土台から導ける公式 | 2倍角・半角・3倍角、和と積の公式、数列の和、三角形の面積 | 導き方を練習し、よく使うものは結果も覚える |
| 決まりごととして覚える公式 | 錐の体積・球の体積と表面積、Σk²の公式 | 使う場面と1組の例でセットにする |
「導ける公式」も、テストでよく使うものは最後に結果まで覚えてかまいません。導き方を知っている人が結果を覚えるのと、形だけを覚えるのとでは、忘れたときの戻しやすさがまるで違います。
暗記と考える力の分け方そのものは、数学は暗記か思考力かでくわしく書きました。
数学の公式を覚える3つの手順
覚える公式は、導き方を追う→白紙に書き出して確かめる→問題で使うの順で進めると定着しやすくなります。1つの公式にかける時間は、慣れれば1回数分です。
数学の公式を覚える3つの手順
- 読んでわかった、で止めない
- 1導き方を1回追う教科書の証明を、自分の手でノートに写しながらたどる。どの公式から出てくるかを1行で書く
- 2白紙に書き出して確かめる何も見ずに公式を書き、θ=0やn=1などの数字を入れて成り立つか確かめる
- 3問題で使い、間隔をあけて思い出す基本問題を2〜3問解く。翌日・3日後・1週間後に、もう一度白紙に書き出す
書き出せなかった公式だけを、手順1に戻す
図:導き方を追い、何も見ずに書き出し、問題で使う。書けなかった公式だけ導き方に戻る
手順1 導き方を1回、自分の手で追う
最初は、教科書や参考書の証明を読みながら、ノートに自分で書いてたどります。読むだけより、手を動かすほうが式の流れが残ります。
途中で止まった行があれば、その行の変形だけを見直してください。最後に「この公式は○○から出てくる」と1行で書いておくと、忘れたときの戻り先になります。
手順2 白紙に書き出し、数字を入れて確かめる
導き方を追ったら、教科書を閉じて白紙に公式を書きます。書けたら、簡単な数字を入れて成り立つかを確かめてください。
たとえば2倍角の公式 cos2θ=1−2sin²θ なら、θ=0を入れると、左辺も右辺も1になるので正しい形です。うろ覚えで 2sin²θ−1 と書いていたら、右辺が−1になるので間違いに気づけます。
手順3 問題で使い、間隔をあけて思い出す
書き出せた公式は、その公式を使う基本問題で2〜3問試してください。公式を見て「どんな問題で使うか」が1行で言えるようになれば、テストでも選びやすくなります。
覚えた日に何度もくり返すより、日をあけて思い出すほうが残りやすいので、次の間隔で白紙に書き出します。
公式を思い出す間隔の目安
| いつ | やること | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 覚えた日 | 導き方を追い、白紙に1回書く | 1公式5分ほど |
| 翌日 | 何も見ずに書き出し、数字で確かめる | 1公式1分ほど |
| 3日後 | 書き出したあと、基本問題を1問解く | 1公式5分ほど |
| 1週間後 | 書き出せなかった公式だけ導き方に戻る | 必要な分だけ |
ノートの右端に、公式と書き出した日付を並べておくと、どれを見直すか迷いません。毎日の勉強に組み込む方法は数学を毎日続ける勉強習慣の作り方にまとめています。
導き方で覚える代表的な公式
ここでは、中学・高校でよく使い、土台から短い手順で導ける公式を5つ取り上げます。どれも数行で導けるので、1回は自分の手で書いてみてください。
展開の公式は分配法則から出る
(a+b)²=a²+2ab+b² は、(a+b)(a+b) を分配法則でばらすと出てきます。a×a、a×b、b×a、b×b の4つを足すと、真ん中の ab が2つ出てくるのがポイントです。
この「2つになる」を一度見ておくと、2ab を忘れて a²+b² と書く間違いが減ります。(a+b)(a−b)=a²−b² も同じで、ab と −ab が打ち消し合うのが理由です。
解の公式は平方完成から出る
ax²+bx+c=0(a≠0)の解の公式 x=(−b±√(b²−4ac))/2a は、平方完成で導けます。流れは次のとおりです。
- 両辺を a で割り、x²+(b/a)x=−c/a にする
- 両辺に (b/2a)² を足して、左辺を (x+b/2a)² にまとめる
- 右辺を整理すると (b²−4ac)/4a² になる
- 平方根をとって、x+b/2a=±√(b²−4ac)/2a から x を求める
分母の 2a や根号の中の b²−4ac が、どの行で出てきたかを見ておくと、形を取り違えにくくなります。
2倍角の公式は加法定理から出る
2倍角の公式は、加法定理の β に α を入れるだけで出てきます。sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ で β=α とすると、sin2α=2sinαcosα です。
cos2α=cos²α−sin²α も同じように出ます。ここに sin²α+cos²α=1 を使うと、2cos²α−1 と 1−2sin²α の形にも書き換えられます。3つの形を丸暗記するより、1つから残り2つを作るほうが確実です。
半角の公式や3倍角の公式も、2倍角と加法定理から導けます。三角関数の単元全体の進め方は数学IIBの勉強法を見てください。
等差数列の和は逆に並べて足す
等差数列の和 S=n(a₁+aₙ)/2 は、和を2回書いて足すと出てきます。
1行目に a₁+a₂+…+aₙ、2行目に順番を逆にした aₙ+…+a₂+a₁ を書きます。縦に足すと、どの組も a₁+aₙ になり、それが n 個あるので 2S=n(a₁+aₙ) です。
等比数列の和も、S から rS を引くと途中の項が消えて出てきます。どちらも「和の書き方を工夫すると消える」という同じ発想です。
三角形の面積の公式は高さから出る
三角形の面積 S=(1/2)ab sinC は、底辺×高さ÷2 から出てきます。辺 BC=a を底辺にすると、頂点 A からの高さは AC×sinC=b sinC です。
これを底辺×高さ÷2 に入れると、(1/2)×a×b sinC になります。小学校から知っている面積の求め方と同じ形だとわかれば、1/2 を落とすことはまずありません。
導き方の出発点の早見表
| 公式 | 出発点 | 導き方のポイント |
|---|---|---|
| 展開の公式 | 分配法則 | 4つの積を足すと ab が2つになる |
| 解の公式 | 平方完成 | (b/2a)² を両辺に足す |
| 2倍角の公式 | 加法定理 | β に α を入れる |
| 等差数列の和 | 和を2回書く | 逆順に並べて縦に足す |
| 三角形の面積 | 底辺×高さ÷2 | 高さを b sinC で表す |
うろ覚えの公式は数字を入れて確かめる
公式の形があやしいときは、簡単な数字を入れて、答えのわかっている場合と合うかを確かめます。テスト中に形を思い出せないときにも使える方法です。
公式を確かめる数字の入れ方
| 公式 | 入れる数字 | 合っていれば |
|---|---|---|
| (a+b)²=a²+2ab+b² | a=1、b=1 | 左辺も右辺も4 |
| 解の公式 | x²−3x+2=0 | 解が1と2((x−1)(x−2)=0 と同じ) |
| cos2θ=1−2sin²θ | θ=0 | 左辺も右辺も1 |
| 等比数列の和 a(rⁿ−1)/(r−1) | a=1、r=2、n=3 | 1+2+4=7 と合う |
| Σk²=n(n+1)(2n+1)/6 | n=1、n=2 | 1 と、1+4=5 |
図形の公式は、特別な形の図で確かめられます。余弦定理 a²=b²+c²−2bc cosA で A=90°にすると、cosA=0 なので三平方の定理と同じ形です。
ひとつ注意があります。1つの数字で合っても、公式が正しいとは限りません。n=1 と n=2 のように2通り試すと、取り違えにかなり気づきやすくなります。
語呂合わせの使いどころと、似た公式の見分け方
語呂合わせは、公式の順番や符号を思い出す補助として使うと役に立ちます。意味を知らずに語呂だけで覚えると、どの公式の語呂だったかが混ざりやすいのが弱点です。
語呂合わせと導き方の役割
- 得意なこと
- sin と cos の並び順など、順番を思い出す
- 苦手なこと
- 符号や係数、どの公式の語呂かの区別
- 使う場面
- 導き方を知ったうえで、テスト前に確認する
- 得意なこと
- 忘れても組み立て直せる。形が変わった問題にも対応できる
- 苦手なこと
- 覚えるまでに少し時間がかかる
- 使う場面
- その公式を初めて習ったとき、形があやしいとき
図:導き方で骨組みを作り、語呂合わせは順番の確認に使う。符号は数字を入れて確かめる
語呂合わせは順番と符号の補助にする
よく知られている例が、加法定理の「咲いたコスモス、コスモス咲いた」です。sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ の、sin・cos・cos・sin の並びを表しています。
cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ には「コスモスコスモス、咲いた咲いた」が使われます。ただし、間の符号がマイナスになることは語呂からはわかりません。α=0 を入れて cosβ になるかを確かめると、符号の取り違えを防げます。
似た公式は並べて違いを1行で書く
取り違えやすい公式は、1つずつ覚えるより、2つを並べて「どこが違うか」を1行で書いておくと、混ざりにくいはずです。
混ざりやすい公式の見分け方
| 混ざりやすい組 | 違いを1行で | 確かめる例 |
|---|---|---|
| 順列Pと組合せC | 並べるならP、選ぶだけならC | 3人から2人:並べると6通り、選ぶと3通り |
| 正弦定理と余弦定理 | 向かい合う辺と角の組があれば正弦定理 | 2辺とその間の角なら余弦定理 |
| 等差数列と等比数列の和 | 足して増えるか、かけて増えるか | 1+2+3 と 1+2+4 |
| 柱と錐の体積 | 錐は同じ底面・高さの柱の3分の1 | 底面積×高さに1/3を付けるか |
| cos2θ の3つの形 | sin だけ・cos だけにしたいかで選ぶ | θ=0 で3つとも1 |
順列と組合せの使い分けは、数学の確率の解き方で例題を使って整理しています。
中学生・高校生で変わる公式の覚え方
公式の覚え方の基本は同じでも、学年によって力を入れるところが変わります。中学生は図や計算から導く練習、高校生は土台の公式から導く練習が中心です。
学年別の主な公式と覚え方の重点
| 学年・科目 | 主な公式 | 覚え方の重点 |
|---|---|---|
| 中1 | 扇形の弧の長さ・面積、球の体積・表面積 | 扇形は円の公式×中心角の割合で考える |
| 中2 | 多角形の内角の和 180°×(n−2) | 1つの頂点から三角形に分けて導く |
| 中3 | 展開の公式、解の公式、三平方の定理 | 分配法則と平方完成から導く |
| 高校 数学Ⅰ・A | 2次関数の頂点、正弦定理・余弦定理、P・C | 図をかき、1組の例で確かめる |
| 高校 数学Ⅱ・B | 加法定理・2倍角、数列の和、微分の公式 | 加法定理から導き、n=1、2で確かめる |
中学生は、公式を言葉と図で覚えると定着しやすくなります。扇形の面積なら「円の面積に、中心角の割合をかける」と言えれば、式の形を忘れても作り直せます。苦手単元をまとめて立て直したいときは中学数学の苦手克服ガイドも参考にしてください。
高校生は、扱う公式が一気に増えます。土台の公式を少数しっかり持ち、そこから導く練習を積むと、覚える量の増え方をおさえられます。数学Ⅰ・Aの単元ごとの優先順位は数学IAの勉強法にまとめました。
1人で導き方を追っても、途中の変形で止まる日が続くこともあります。そのときは、教科書の証明を一緒に読んでくれる人を外に持つのも1つの方法です。自宅で質問できる形はオンライン数学塾のおすすめと費用比較、通塾も含めた高校生向けの選び方は高校生向け数学塾の選び方で比べられます。
よくある質問
Q1:数学の公式は全部暗記しないといけませんか
全部を丸暗記する必要はありません。三平方の定理や加法定理などの土台の公式を覚え、そこから導ける2倍角や数列の和は、導き方を練習すれば足ります。よく使う公式は、導き方を知ったうえで結果も覚えておくと、テストで時間を取られません。
Q2:数学の公式を語呂合わせで覚えてもいいですか
使ってかまいません。ただし、語呂合わせが助けてくれるのは順番の確認までです。符号や係数は語呂からはわからないことが多いので、θ=0 や n=1 などの数字を入れて確かめる習慣とセットにしてください。
Q3:公式を覚えたのに、テストで使えないのはなぜですか
公式と、それを使う問題の形が結びついていないことが多いです。公式を覚えたら、その公式を使う基本問題を2〜3問解き、「どんな問題で使うか」を1行で書いておきます。問題を見て公式を選ぶ練習が、覚える練習と同じくらい要ります。
Q4:中学生が数学の公式を覚えるにはどうすればいいですか
公式を言葉と図で言えるようにするのがおすすめです。扇形の面積なら「円の面積×中心角の割合」、多角形の内角の和なら「三角形に分けた数×180°」のように言えれば、式を忘れても作り直せます。覚えたら翌日と3日後に、何も見ずに書けるか試してください。
Q5:公式集やアプリは使ったほうがいいですか
公式集やアプリは、書き出した公式が合っているかを確かめる道具として使うと便利です。眺めるだけでは、何も見ずに書けるようにはなりにくいからです。先に白紙に書き出し、そのあと公式集で答え合わせをする順にすると、覚えたかどうかがはっきりします。
まとめ
まとめ
- 数学の公式が抜けやすいのは、形だけを使う場面と切り離して覚えているため
- 公式は土台・導ける・決まりごとの3種類に分け、覚える量を減らす
- 覚え方は、導き方を追う→白紙に書き出して確かめる→問題で使う、の3つの手順
- 翌日・3日後・1週間後に、何も見ずに書き出せるか試す
- うろ覚えの公式は、θ=0 や n=1、2 などの数字を入れて確かめる
- 語呂合わせは順番の補助にとどめ、似た公式は並べて違いを1行で書く
今週習った公式を1つ選び、教科書の導き方を自分の手でノートに追ってみてください。翌日に白紙へ書き出せたら、その公式はもう形だけの暗記ではなくなっています。
参考にした資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」(第2章第4節 数学 第1 数学Ⅰ 2内容(2)図形と計量、第2 数学Ⅱ 2内容 三角関数)
- スタディサプリ進路「モヤモヤすっきり!?うろ覚え解消塾!~数学編~」(高校生エディター69人へのアンケート・2023年8月31日〜9月2日・編集部調べ)
2026年10月閲覧。
※本記事は数学の公式の覚え方の一般的な整理です。合う覚え方は学年・使っている教科書・学校の授業の進め方によって異なります。学校で公式の扱い方や証明の書き方に指示がある場合は、学校の指示を優先してください。

