因数分解が苦手なときの直し方|たすき掛けで止まる理由

因数分解が苦手なときの直し方

因数分解が苦手な人の多くは、公式を知らないというより、式をどの順で見るかが決まっていません。共通因数→公式の形→たすき掛けの順に見ると決め、中3で習う4つの公式に戻ってから数学Iのたすき掛けへ進むと、止まる場所がはっきりします。

この記事でわかること

  • 因数分解で手が止まる4つの場面
  • 中3の公式と数学Iの因数分解の違い
  • たすき掛けの符号の決め方と候補の減らし方
  • 中3から数学Iまでの戻り方と毎日の練習量

因数分解は中学3年で習い、高校1年の数学Iで扱う式の形が広がる単元です。中学のテストでは解けていたのに、高校に入って急に手が止まった人も、中学のころから苦手だった人もいると思います。

式を見る順番

  1. 全部の項に共通する因数があれば、先にくくり出す
  2. 項が2つなら、2乗の差 a²−b² の形を探す
  3. 項が3つで x² の係数が1なら、和と積の公式を使う
  4. x² の係数が1でなければ、たすき掛けを使う
  5. 答えを展開して、元の式に戻るか確かめる

目次

因数分解で手が止まる場面は大きく4つ

因数分解の苦手は、どの場面で止まるかを見れば、戻る場所が決まります。自分がどれに当てはまるか、下の表で確かめてください。

止まる場面と戻り先

止まる場面例戻り先
公式の形が見えないx²−9 を見ても手が動かない中3の4つの公式
x² の係数が1でない2x²+7x+3たすき掛け
共通因数をくくり忘れる2x²−8 を途中で止める見る順番の1番目
文字が2つあるx²+3xy+2y²1つの文字に注目して並べ直す

個別指導塾で高校1年生を見ていると、数学Iの最初の定期テストで止まる生徒は、x² の係数が1でない式で手が止まっていることが多いです。中学では、この形の式をほとんど練習しません。

共通因数のくくり忘れは、答えが途中で止まるだけなので気づきにくい失点です。2x²−8 は 2(x²−4) で終わりにせず、2(x+2)(x−2) まで分解して完成になります。

中3で習う公式は4つ、数学Iで増えるのはたすき掛け

中学で習う因数分解は、x² の係数が1の式が中心です。文部科学省の中学校学習指導要領(平成29年告示)は、第3学年で、次の公式を使う簡単な式の展開や因数分解を扱うとしています。

  • (a+b)²=a²+2ab+b²
  • (a−b)²=a²−2ab+b²
  • (a+b)(a−b)=a²−b²
  • (x+a)(x+b)=x²+(a+b)x+ab

同じ学習指導要領は、中3の二次方程式を因数分解で解くときも、この公式が使えるものを中心に扱うとしています。x²+px+q=0(p、q は整数)の形が中心です。

高校の数学Iでは、「二次の乗法公式及び因数分解の公式の理解を深めること」とされています(高等学校学習指導要領・平成30年告示)。ここで x² の係数が1でない式のたすき掛けが出てきます。

教科書会社の啓林館が公開している授業実践記録(山口県立高森高等学校の教員が中学3年生に行った授業)は、この関係をこう説明しています。中学で習った「和が x の係数、積が定数項になる2数を探す」方法は、たすき掛けのうち x² の係数が1になる特別な場合だ、という見方です。

中3の因数分解と数学Iの因数分解

中学3年
式の形
x² の係数が1の式が中心
使う道具
4つの公式(和と積・2乗・2乗の差)
例
x²+5x+6=(x+2)(x+3)
高校1年(数学I)
式の形
x² の係数が1でない式・文字が2つの式
使う道具
4つの公式+たすき掛け・置きかえ
例
6x²+7x+2=(2x+1)(3x+2)

図:中3の「和と積」は、たすき掛けのうち x² の係数が1の場合。高校ではその外側の式を扱う

たすき掛けは、中3の方法を広げた形になっています。中3の4つの公式があいまいなまま進むと、たすき掛けの途中の計算でも同じところで間違えます。

式は「共通因数→公式→たすき掛け」の順に見る

因数分解は、式を見る順番を毎回同じにすると迷いが減ります。冒頭の5つの手順を、例題で一度通してみましょう。

見る順番を当てはめた例

式最初に気づくこと答え
2x³−8x2x が共通因数 → 残りが2乗の差2x(x+2)(x−2)
4x²−9(2x)²−3² の2乗の差(2x+3)(2x−3)
x²−10x+2525=5²、10=2×5 の2乗の形(x−5)²
x²+x−12積が−12、和が1の2数は4と−3(x+4)(x−3)
2x²+7x+3x² の係数が2 → たすき掛け(x+3)(2x+1)

表の1行目は、共通因数をくくった後にもう一度公式の形が出てくる例です。くくり出した後の式も、手順2からもう一度見直してください。

最後の手順の「展開して戻す」は、答え合わせを自分でできる方法です。(x+4)(x−3) を展開すると x²+x−12 に戻るので、答えが合っているとわかります。計算の見直し方は数学の計算ミスをなくす方法でも詳しく書いています。

因数分解で式を見る順番

  • どの式でも、上から順に確かめる
  • 1共通因数はあるかあれば先にくくり出す。2x³−8x なら 2x
  • 2項が2つか2乗の差 a²−b² の形を探す
  • 3x² の係数が1か1なら和と積、または2乗の公式を使う
  • 4係数が1でないかたすき掛けで組み合わせを探す
  • 5展開して戻るか元の式に戻れば完成。戻らなければ手順4へ

くくり出した後の式も、手順2から見直す

図:共通因数→公式→たすき掛けの順に確かめ、最後に展開して元の式に戻るかを見る

たすき掛けで止まるのは候補の探し方が決まっていないから

たすき掛けで止まる人は、組み合わせの候補を、思いつきで1つずつ試していることが多いです。符号を先に決め、使えない候補を外してから試すと、試す回数が減ります。

ax²+bx+c を (px+q)(rx+s) に分けるときに探すのは、次の関係が成り立つ組です。

  • p×r=a(x² の係数)
  • q×s=c(定数項)
  • p×s+q×r=b(x の係数)

6x²+7x+2 を例にたすき掛けを通す

x² の係数6は、1×6 か 2×3 に分けられます。定数項2は 1×2 です。

左の列に 2 と 3、右の列に 1 と 2 を置き、斜めに掛けて足します。2×2+1×3=7 となり、x の係数と一致しました。よって 6x²+7x+2=(2x+1)(3x+2) です。

啓林館の実践記録の配布プリントには、「並び方に注意!」と書かれています。左に x² の係数を分けた数、右に定数項を分けた数を置く形で、6, 7, 2 を順に並べるのではありません。同じプリントに「1回目で見つかるとは限りません」とあるとおり、何回か試すのは普通のことです。

符号は定数項を見て先に決める

x² の係数が正のとき、q と s の符号は定数項 c で決まります。c が正なら同じ符号、c が負なら違う符号です。

たすき掛けの符号の決め方(x² の係数が正のとき)

定数項 cx の係数 bq と s の符号
正正どちらも正
正負どちらも負
負正・負どちらでも片方が正、もう片方が負

たとえば 3x²−5x−2 は、定数項が負なので q と s は違う符号です。(3x+1)(x−2) を試すと、3×(−2)+1×1=−5 となり一致します。

共通因数を持つ組は候補から外す

元の式に共通因数がないとき、(2x+2) のように中に共通因数を持つ因数は出てきません。6x²+7x+2 なら、2x+2 や 3x+3 の形はその時点で外せます。

この目印を知っているだけで、x² の係数や定数項が大きい式でも、試す組がかなり減ります。

たすき掛けの進め方

  • ax²+bx+c を (px+q)(rx+s) に分ける
  • 1符号を決める定数項が正なら同じ符号、負なら違う符号
  • 2a と c の分け方を書き出す6 なら 1×6・2×3、2 なら 1×2
  • 3使えない組を外す2x+2 のように中に共通因数を持つ因数は外す
  • 4斜めに掛けて足すp×s+q×r が x の係数と一致する組を探す

見つかったら展開して、元の式に戻るか確かめる

図:符号を先に決め、使えない組を外してから斜めに掛ける。思いつきで試す回数が減る

文字が2つの式は、1つの文字について並べ直す

x と y が両方入った式は、どちらか1つの文字に注目して、2次式として並べ直します。もう1つの文字は、ただの数と同じように扱います。

たとえば x²+3xy+2y² は、x について見ると「x² の係数1、x の係数3y、定数項2y²」です。積が 2y²、和が 3y の2つは y と 2y なので、(x+y)(x+2y) になります。

このとき多いのは、途中で y を書き落とすミスです。啓林館の実践記録の指導案でも、y を含む問題では「y が抜けること」が想定されていました。

項が多い式は x について整理してから

数学Iでは、2x²+xy−y²+4x+y+2 のような項の多い式も出てきます。x について整理すると、2x²+(y+4)x−(y²−y−2) です。

定数項にあたる −(y²−y−2) は、−(y−2)(y+1)=(y+1)(−y+2) と分解できます。あとは x² の係数2と、y+1・−y+2 を使ってたすき掛けをしましょう。

1×(−y+2)+2×(y+1)=y+4 となるので、答えは (x+y+1)(2x−y+2) です。展開すると元の式に戻ることも確かめてください。

同じかたまりは1つの文字に置きかえる

(x+1)²+3(x+1)+2 のように同じかたまりが何度も出る式は、x+1=t と置きかえます。t²+3t+2=(t+1)(t+2) となり、t を戻すと (x+2)(x+3) です。

中3からの戻り方と毎日の練習量

因数分解の練習は、1日10〜15分・5〜8題を目安に毎日続けるのがおすすめです。手が覚えるまで繰り返す計算なので、週末にまとめて解くより、回数を増やしてください。

戻り方の段階と次へ進む目安

段階戻る範囲確かめる問題次へ進む目安
1中1・中2の分配法則と文字式(2x−3)(x+4) の展開展開を途中式つきで正しく書ける
2中3の4つの公式x²−9、x²+x−124つの公式を白紙に書ける
3数学Iのたすき掛け6x²+7x+2、3x²−5x−2符号を先に決めてから組を探せる
4文字が2つ・置きかえx²+3xy+2y²y を落とさずに分解できる

展開でつまずく人は、段階1から始めてください。因数分解は展開の逆の計算なので、展開があいまいなままでは答えを確かめることもできません。

中学の範囲から広く戻りたいときは、数学が全くわからないときの最初のステップと中学数学の苦手克服ガイドが参考になります。

よくある質問

Q1:因数分解が苦手な人は、何からやり直せばいいですか

まず中3の4つの公式を白紙に書けるかを確かめてください。書けなければ公式の練習から、書ければ式を見る順番(共通因数→公式→たすき掛け)を例題で通す練習に進みます。展開ができない場合は、中1・中2の分配法則まで戻ります。

Q2:たすき掛けが速くできるようになるにはどうすればいいですか

符号を先に決め、中に共通因数を持つ組を外してから試す習慣をつけてください。試す組が減るので、それだけで速くなるはずです。毎日数題ずつ続けると、よく出る組み合わせは書き出さなくても見えてきます。

Q3:中学の因数分解と高校の因数分解は何が違いますか

中学は x² の係数が1の式が中心で、4つの公式で解ける形を扱います。高校の数学Iでは、x² の係数が1でない式のたすき掛けや、文字が2つの式、置きかえを使う式が加わる、という違いです。

Q4:因数分解の答えが合っているか確かめる方法はありますか

答えを展開して、元の式に戻るかを見てください。戻らなければどこかが違います。あわせて、それぞれの因数がまだ分解できないかも確かめると、途中で止めるミスを防げます。

Q5:因数分解が苦手なままだと、高校数学のどこで困りますか

二次方程式を因数分解で解く場面や、二次関数・二次不等式の計算で使う機会が多い単元です。数学Iの最初に出てくるので、苦手が残ると後の単元でも同じ計算で止まりやすくなります。早めに中3の公式とたすき掛けを固めておくと安心です。

まとめ

まとめ

  • 因数分解で止まる場面は、公式の形・x² の係数・共通因数・文字が2つの4つ
  • 中3は x² の係数が1の式が中心。数学Iでたすき掛けが加わる
  • 式は「共通因数→2乗の差→和と積・2乗→たすき掛け」の順に見る
  • たすき掛けは符号を先に決め、共通因数を持つ組を外してから試す
  • 文字が2つの式は、1つの文字について並べ直す
  • 答えは展開して、元の式に戻るかを確かめる

教科書か問題集の因数分解のページを開き、x² の係数が1でない式を1題だけ選んでください。符号を決めるところから、この記事の順番で解き直してみると、どこで止まっていたかがわかります。

1人で進めにくいときは

参考にした資料

2026年10月閲覧。

※本記事は因数分解の学び方の一般的な整理です。合う進め方は学年・使っている教科書・学校の授業の進度によって異なります。テストの範囲や出題の形は、学校の指示で確認してください。

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この記事を書いた人

Maedaです。国立大学の数学科を出て、公立高校の数学指導員として15年間働いてきました。今は地元で個別指導塾を開いて8年目、小学生から高校生まで60名ほどを見ています。

塾を始めたのは、40人のクラスでは、苦手な子に向き合いたくても物理的に手が回らなかったからです。教える側と経営する側の両方に立って気づいたのは、成績や目標に合わない塾に通い続けている家庭がとても多いことでした。ランキングの多くは合格実績と料金だけで順位をつけていますが、それだけでは選べません。

集団塾と個別塾の違い、進学塾と補習塾の使い分け、家庭教師やオンラインとの比較まで、指導員15年と塾経営8年の両方の経験から解説します。お子さんの進路を「数学が苦手だから」と諦める前に、選び方の軸から一緒に整理しましょう。

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